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つらつらと小説でも書いていこうかと。
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 俺が姫さんと出会った時のことを、姫さんは朧気にしか覚えとらへんという。

 けどもうそれだけでビックリや。朧気でも覚えとるっちゅうのは驚異的や。
 もしかしたらどっかで刷り込まれたんかと言うてみたら怒鳴られたんで、俺はそれがホントやと思うことにしとる。
 対する俺は、その日のことをよう覚えとる。
 きらきら陽が眩しゅうて、全てのものが色とりどりに鮮やかやった。
 なんやヘタレそうなおっさんに挨拶しとる親父の手を振りほどき、待ちきれずに俺は走った。
 道は分かった。
 風が、空気が、草が、大地が、俺の直感となって教えてくれた。
 姫さんは両手開きのドアの向こうにおった。
 世話係のマイヤーさんに揺りかごに乗せられ、きらきらとその金髪を輝かせとった。
 その姫さんにまっすぐかけてって。
 マイヤーさんから奪うようにして、姫さんを腕に抱いた。
 柔らかい体。心地よい鼓動。綺麗な青と茶の瞳。
『あいたかった』
 その言葉が自然に胸にせり上がって喉から飛び出した。
 それに応えるように、姫さんは微笑んだ。微笑んで、俺の方に手をさしのべた。
 気がついたら泣いとって。
 この日のことは忘れられんやろうと、俺は思った。
 姫さんは本来なら何も覚えてへん赤ん坊で、俺は5歳で。

 それでも俺と姫さんは、そん時からずっと一緒でそばにいる。

 ……いくら何でも、二十四時間三百六十五日ってわけにはいかんかったけどな。くやしいことに。
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